2007年07月12日

“Google図書館”と自治体の行政資料公開

“Google図書館”と自治体の行政資料公開
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/NPC/20070709/277057/?P=2
デジタルでアナログな共同体/小林 隆
2007/7/12

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 我が家では高校生の長女が期末試験の最中なので、ダイニングテーブルの上に教科書、ノート、参考書、それに先生からもらったプリントの類を散乱させて勉強している。彼女はダイニングテーブルで勉強する習慣がある。わからないことは家族に聞いてしまった方が手っ取り早いし、テレビを見ながら勉強することもできる。覚えることが嫌いな彼女にとって、人が集まってくるダイニング周辺は面倒な勉強に最適な空間なのだろう。

 今から10年以上前になるけれど、慶應義塾大学が取り組んだ「創造的ディジタルメディアの基礎と応用に関する研究」というプログラムのミーティングに初めて参加したときに※1、僕の隣に座った熊坂賢次先生が「これからはカンニング教育だよ! カンニング!」というので驚いた。

 その主旨はこうだ。人々の知識はコンピュータのハードディスクにどんどん収まりはじめている。人間の記憶機能はコンピュータが代替できるようになった。さらに、知識の詰まったコンピュータはインターネットでみんなつながって、検索エンジンも日進月歩だ。だから記憶を問う教育なんてのは意味がないというのだ。

 素早く過去の知識を検索、参照して、未来のための知識を創造する人材を育成することが大切だ。記憶を重視する勉強なんて、時間がもったいない。高校までの教育は、教科書や参考書、さらにはパソコンなんか全部持ち込み可にして、問題が出されたら素早くそれらを参照して答えを出す練習をした方がいい。そうした作業が円滑かつスピーディにできるようになったら、本当は年齢なんか関係なく早く大学に来て、社会に山積している「答えが見つかっていない問題」に取り組んでほしいというわけだ。

 なるほど、なるほど。それ以来、僕は、インターネットにいつでも接続可能で、たくさんの辞書や百科事典がインストールされたノートパソコンを抱えて歩くようになった。

 これまでは、インターネットには信頼できない情報もたくさんあった。でも、最近では、Googleブック検索なんていうサービスがスタートして、出版社が提供した本の数ページが読めるようになってきた。信頼に足りそうな本なら、そのまま図書購入サイトへ進むこともできる。こういうビジネスのモデルはザラにある。でも、僕がオッ!と思ったのは、Googleブック図書館プロジェクトの方である。これはハーバードやオックスフォード大学の図書館の蔵書が検索できて、著作権の切れた本なら全文がインターネットで読めるようになっているのだ。日本では慶應義塾大学がGoogle図書館プロジェクトと提携することを決めた。

 今ある本も読めたらもっといいのにと思う。そうしたら人間の知的生産性や創造性は何倍にも向上するだろう。著作権を守ることも必要だと思うけれど、著作権を守る価値が知的生産性や創造性を向上させる価値を上回るかどうかについては議論の余地が相当にある。僕自身は、ローレンス・レッシグ先生の創造性を妨げない著作権のあり方を問う活動や、「クリエイティブ・コモンズ」という新しい著作権管理の運動には賛同できる※2。

 で、そんなことを考えていたら、もっと身近で、僕たちにとって大切で公開可能な図書資料が、多くの地方自治体の図書館に眠っていることに気がついた。しかも、それらの資料には著作権はほとんどない。

 地方自治体の図書館には、自治体の総合計画などたくさんの計画書がある。計画書は、これから自治体が未来において何を目指し、何をしようと考えているのか、その方針を示したものだ。さらには、予算書も決算書も公開されている。予算書は、その年度の税収入をどのように使うかを決めたものだし、決算書はそのお金がどのように使われて、どのような成果があったのかを示すものだ。議会の議事録を見れば、今自治体で問題になっている内容が一目でわかる。

 議会開催の数カ月後には図書館で全部資料は公開されるはずだ。それに、それぞれの自治体の図書館には、その街の史料も編纂され保存されている。そうした資料は全部インターネットに公開するべきである。

 それらの資料は、きっと、自治体の知的資産となるばかりでなく、人間社会全体の知的資産として活用される可能性がある。公立図書館のみなさん、是非ともこうした資料のインターネットへの公開を検討してほしい。そして、Google図書館プロジェクトのみなさん、大学の主要な図書館が参加するようになったら、次は日本の公共図書館にもその触手を伸ばしてほしい。

 情報社会は知的生産と創造の時代だ。人生という短い時間を記憶に費やしている暇はない。

【注】

※1 これはCOEプログラムとして実施されました。COEとはCenter of excellenceのことで、世界レベルの中核的研究機関を創ろうという文部科学省のプログラムです。現在では、21世紀COEプログラム、さらには、グローバルCOEプログラムへと進んでいて、各大学は、このプログラムに採択されるために必死になって競争を繰り広げています。【本文に戻る】

※2 ローレンス・レッシグの本はたくさん出版されていますが、例えばfree-cultureという本は、出版物として本屋さんで売られていますが、流通コストのかからないインターネットなら、全文を読むことができる著作権の運用がなされています。だから、音読のボランティアが読み上げたファイルがインターネットに公開されて、目の見えない人の役に立つなんていうことが起こります。また、レッシグの活動に賛同して、日本でもクリエイティブ・コモンズ・ジャパンの活動が起こっています。【本文に戻る】
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posted by gljblog at 00:00| 慶応さん+日本のGoogle Book Search | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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